以前、デビアスが合成ダイヤモンドの新ブランドを立ち上げる、というニュースがありました。
私は宝石関係の仕事をしているわけでもないので、こういったニュースがどのような影響を与えるものか正確な判断はつきません。
しかし、一個人としては、良いんじゃないのかな? と思います。
それは、デビアスのような大きな会社が「合成」ダイヤモンドのブランドだと明確に打ち出すことで、一般の消費者に、「宝石には合成されたものがある」との周知を促せると考えるからです。
私は宝石が好きなので、色々と素人なりに調べたりもします。
そうすると、例えば、
- エメラルドに含浸処理がされていること
- ルビーに加熱処理がされていること
- ブルートパーズに放射線照射処理がされていること
などは割と知られた事実として認識します。
しかしこれらは、宝石に興味など無い人間にとっては驚くことかもしれません。
それが良い悪いではなく、既に流通しているものがそうなっていることさえ知らないのが普通なのではないでしょうか。
アイスブルーダイヤモンド、など、婚約指輪の「サムシングブルー」に絡めてロマンティックに売られているものも、どう考えてもトリートメントですよね?
あれが天然物だったら、30~50万程度の指輪の添えダイヤになんて使えるわけがありません。ケタが1つは変わるはず。
知った上で選ぶのと、知らずに選んでいるのとでは、もしかしたら違った受け止め方をする方もいるかもしれません。
私としては、たかだか数万円の宝飾品に、ブルームーンストーンだの(ロイヤルがつく場合さえある)、パライバトルマリンだのがあるわけがないと思うのですが……
いえ、あるかもしれませんが、それは恐らく宝石と呼べるレベルではないと、個人的には思います。
ただそれはあくまでも、「雑誌で紹介されているレベルの宝石を見たことがあるから」「カラーダイヤモンドが凄まじい高額でオークションに出されるのを知っているから」違和感を覚えるだけであって、最初から「これがそうです」と出されたら信じるかもしれません。
ゲーマーとしての話で恐縮ですが、かつて「オンラインゲーム」という概念を周囲に説明することは大変難しいことでした。
ゲームをしている、それは分かってもらえるのですが、画面の向こうに「生身の人間がいて、約束や時間拘束がある」ことを伝えるのは、実感しないと分からないのです。
「.hack」や「FF11」、そして「モンスターハンター」シリーズを通じて一般にオンラインゲームが広がるとともに、理解も広がったと体感しています。
宝石が好きな個人がいちいち、友人知人に「エメラルドは含浸処理されているそうだから、軽々しく超音波洗浄に出さないほうがいい」などと忠告しても、「オタクの豆知識」程度にしか受け止めてもらえないのです。
ですから、「合成宝石」という存在そのものについても、有名な会社がハッキリと明言することは有意義ではないかと思うのです。
なにしろ、貴金属高騰の今、デパートなどの1階で売られている2万円以下の「ジュエリー」に使われている宝石、私は大分疑っています。
どう考えたってこの価格でこの石が使われるのって不思議、そういうもの、見かけませんか?
あれはひょっとして、合成石が混じってはいないでしょうか(個人の疑問ですよ!)。
デビアスが「これは合成石のジュエリーです」と立ち上げれば、逆に、宝石市場はもっと素直に、「手の届きやすい合成石のブランド」と「宝石のブランド」に分かれていくような気がします。
なぜなら、合成石のジュエリーは、私見ですが綺麗過ぎて「違う」と思います。
冒頭の写真は、私が所有する合成ルビー(ベルヌイ法)ですが、こんな大きさ、天然石でしたら「ちょっと興味があるから」程度で購入できる価格では断じてあり得ません。
こちらが裏で
浮かせて光を入れるとこうなります。上は比較にルビーの指輪。
マリーエレーヌさんのジュエリーを購入したとき感じたのですが、内包物やクラックにも「味」があり、クリア過ぎる合成石は却って「オモチャっぽい」と感じてしまう側面があるのです。
もちろん、億単位の、美術館レベルの石になりますと、ありえないほど綺麗なものもあるのですが……。
ですから、合成石が販売されたとしても、天然石の市場価値は下がらないと思います。
もちろん問題は「天然石と偽って合成石を売る」場合に起こりますから、これまで以上に、「どこのお店で買うのか」が求められることになるんでしょうね。
私としては合成石の市場が、今までのジュエリーブランドとは別に構築されていくのは歓迎だし、話題になれば皆がジュエリーに興味を持ってくれるんじゃないかな、と思いました。
なおデビアスの合成ダイヤモンドに関する記事はこちら
日本において合成石を明言して販売しているのが京セラさんです。